私がゲーム業界に入ったのは、プレイステーションが出て少し経った頃で、
1995年だったと思います。
自主制作のゲーム
が認められて、小さなゲームデベロッパーに入りました。
デベロッパーというのは、要は「下請け」で、大手から頼まれたゲームを
作る立場にある会社です。
まずはゲーム業界に足を突っ込むこと。食い込むこと。
そう思い、当時ゲーム業界に就職したい人なら必ず買っていた
「ゲーム業界就職読本」に掲載されていた、一番設立年月日が浅い会社を
選んだのです。
規模が小さな会社というのは、間違いなく人手を欲しがっていると踏んだ
んですね。
「その自主制作ゲームなら、大手も取ってくれるはず」という声も
あったのですが、昔はあった大手メーカーへの憧れはすでになく、
まずは自分のものが作りたい、という欲求が先行し、小くてもゲーム会社に
確実に入る、という戦略を選びました。
ところで、ゲーム会社には2種類の会社があります。
1・ゲームデベロッパー
2・ゲームメーカー
ですね。
デベロッパーは先にも説明しましたが、メーカーからゲーム開発仕事を
受託してゲームを作る会社です。従業員が5〜30人ほどの
中小規模の会社です。
注意したいのは、デベロッパーはゲームを作らされる立場、
というイメージではなく、企画書を作ってくれ、と言われて、ゲーム全般を
デザインすることもあります。
ただしほとんどの場合、「ギャルゲーにしたい」とか
「犬を使ったゲームにしたい」とか、そういう大枠の条件がつきます。
そして、メーカーから派遣されるディレクター(ゲームの方向を決める人)が
企画の段階から制作されるゲームに何度もチェックを入れ、
ゲームの内容を調整していきます。
メーカーによっては、ディレクターから一方的に指示されることもありますが、
私が関わった仕事では、ディレクターとプランナーが共同で、ああでもない、
こうでもないと、ゲームの内容について詰めていったのがほとんどでした。
企画側としてはそういうふうに詰めていかないとつまらないですしね。
お互いの立場関係的には、やはりお金を出しているメーカー側の
ディレクターが強いです。
だからディレクターがゲーム内容の主導権を握ることのほうが多かったですね。
企画はアイデアマンとして機能することのほうが多かったように思います。
私はゲームデザインについてはだいぶガンコ物だったので、ゲームデザインに
ついては、「これこれこうだからこうしたい」と理詰めでディレクターを
説得することが多かったです。
ただこの「理屈」によるアプローチは、今思うとあまり説得力が
なかったと思います。
だからよく考えが伝わらなくて、モメたことも多かったですね(笑)。
ゲームの面白さというものは、まず理屈では伝わりません。
相手を理屈でねじ伏せることはできても、「納得」や「共感」を
生み出すことは難しいのです。
私が経験的に思うのは、
「そのゲームの内容を伝える時点で、すでにゲームデザインは始まっている」
ということです。
会議に出席している人に「面白そう!」と思わせられなければ、
そのゲームはやはり面白いものにならない確率が高いと思います。
そして「面白そう!」とチームメンバーに思ってもらえなければ、
意義のあるゲームを作っているとも思ってもらえず、
ゲーム制作の現場が盛り上がらないのです。
だってそうですよね?
説明されても面白いかどうかわからないゲームを作るのは、
「納得」も「共感」もないですから、気持ちのラポール(掛け橋)を
作りようがないのです。
チームとして、一体感を持つことができないのです。
だからこそ企画としては、ゲームの内容をプレゼンテーションする場面で、
チームメンバーから「それは面白そう!」という気持ちを引き出す
必要があるのです。
では、ゲームデベロッパーに対してゲームメーカーはなにかというと。
まず、ゲームを作る資本を持っている会社、ということが言えます。
「ゲームを作り出す力(資本)」を持っているのがメーカーです。
メーカーはその資本をもとに、デベロッパーや、社内に持っている
チーム(内部製作チーム)にゲームを作らせ、ヒットを狙います。
そしてそのヒットで得た利益をさらにゲーム開発に分配し、
さらなるヒットを狙う…という、ちょっと説明が大雑把ですが、
そういう流れで、メーカーは動いています。
資本があれば、大規模なゲームを作れますし、技術開発ができる余裕も
あります。また、ゲームだけでなく、その周辺にある攻略本などの書籍、
ぬいぐるみなどのマーチャント、ネット展開、マルチプラットフォームへの
対応、などなど、さまざまなビジネス的展開が可能になります。
このページのトップへ